確定拠出年金制度


制度の概要


確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん・DC:Defined Contribution Plan)とは、確定拠出年金法を根拠とする私的年金のことです。平成13年(2001年)10月から始められ、「日本版401k」とも言われています。
確定拠出年金(DC)は、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度です。
掛金を企業が拠出する「企業型DC」と加入者自身が拠出する「個人型年金(iDeCo)」があります。
初めて施行された平成13年(2001年)当時は、バブルの崩壊で大量の労働移動が起こり、社会問題となっており、国も社会保障制度を抜本的に見直す必要がありました。企業が国に代わって運用してきた厚生年金基金も維持困難な状況となり、国に返上して新たな上乗せ年金制度が必要となりました。そこで注目されたのが、米国で採用されていた確定拠出個人年金制度(401k)です。
転職をした場合でも資産をそのまま持ち運びできる利便性や、受給時・拠出時・運用時に税制上のメリットもあることから、当初は確定拠出年金を導入する企業もありましたが、近年、下図のとおり減少傾向です。

年金制度がある企業の割合

FPジャーナル2016年12月号より

そこで国は確定拠出年金制度普及促進のため、平成28年(2016年)に大幅な法改正を実施しました。平成29年(2017年)1月から順次施行され、個人型年金(iDeCo)への加入要件が緩和されています。また、平成30年(2018年)1月からは、12月から翌年11月までの範囲において、複数月分をまとめて拠出することや、1年分をまとめて拠出することが可能となっています。つまり、ボーナス一括払いが可能になったと言うことです。

 

加入対象者


企業型は実施企業に勤務する従業員、個人型は自営業者・専業主婦(夫)等および公務員や私学共済制度の加入者を含む厚生年金保険の被保険者、但し、企業型DC加入者においては、企業型DC規約で個人型への加入が認められている企業に限ります。

企業型年金 個人型年金(iDeCo)
第1号厚生年金被保険者(民間企業の会社員) 国民年金第1号被保険者
第4号厚生年金被保険者(私学共済加入者) 国民年金第2号被保険者
国民年金第3号被保険者

 

年齢要件は設けていませんが、実質60歳未満と考えて良いでしょう。企業型の場合、規約で規定すれば65歳までとすることが出来ます。個人型では国民年金の被保険者が、20歳以上60歳未満であることとされており、実質60歳未満でないと加入できません。

 

掛金の拠出と事業主体


企業型では、規約の承認を受けた企業が事業主体となって事業主が掛金を拠出します。但し、規約に定めた場合は加入者も拠出可能です。個人型では、国民年金基金連合会が事業主体となって加入者個人が掛金を拠出します。

 

拠出限度額


下図の通り平成29年(2017年)1月から個人型年金(iDeCo)への加入要件が大幅に緩和されています。企業型年金のない会社員にしか認められていなかった個人型年金(iDeCo)への加入が、拠出金額に制限はあるものの公的年金加入者であれば、全ての国民が何らかの形で加入できることになります。また、年単位での一括払いも可能です。

iDeCoの拠出上限額

FPジャーナル2016年12月号より

  • 国民年金基金との合算額(※1) 
  • 企業型DCがある場合には①マッチング拠出ができないこと、②事業主掛金の上限を年額18.6万円(※2)、年額42万円(※3)とすること、③iDeCo加入を認めるということ、が規約で定められている場合に限り、iDeCo加入が可能(※2・※3)

マッチング拠出とは、企業型DCで規約に定めた場合に加入者個人が上乗せ拠出できる制度です。

企業型年金 個人型年金(iDeCo)
厚年基金等未加入 55,000円/月
個人型DCのみ加入 35,000円/月
自営業者等 68,000円/月
※国民年金基金と合算範囲内
厚年基金等加入 27,500円/月
個人型DCにも加入 15,500円/月
厚生年金被保険者 23,000円/月
但し公務員は 12,000円/月
厚生年金と厚年基金等加入 12,000円/月
厚生年金と企業型年金加入 20,000円/月
専業主婦(夫)等 23,000円/月

 

 

運用


運用商品(預貯金・投資信託・保険商品等)の中から、加入者自身が運用指図を行います。また、運用商品を選定・提示する者(導入企業・金融機関)は、必ず3つ以上の商品を選択肢として提示することとなっています。

 

離転職した場合等の年金資産の移換


資産残高(掛金と運用収益の合計額)は、加入者ごとに個別に記録管理されており、資産額等の記録が年1回以上通知されることになっています。また、離転職の場合には、国民年金の加入者なら個人型年金へ、転職先に企業型DCがあれば、そちらへ資産を移換することができます。

 

給付


給付には、老齢給付金・障害給付金・死亡一時金・脱退一時金があります。
個別の状況にもよりますが、50歳以上の方は運用期間が短くなるため、慎重に検討する必要があります。確定拠出年金(DC)とNISA(少額投資非課税制度)の両方を視野に検討されると良いでしょう。

老齢給付金
5年以上の有期又は終身年金で受け取れます。(規約により一時金の選択可) 受給開始年齢は、下図の通りになります。

60歳までの加入期間と老齢給付金受給開始年齢

FPジャーナル2016年12月号より

障害給付金
5年以上の有期又は終身年金で受け取れます。(規約により一時金の選択可)
70歳に到達する前に傷病によって、一定以上の障害状態になったとき、その傷病期間が、1年6ヶ月を経過した場合に受給することができます。

死亡一時金
加入者等が死亡したときに、その遺族が資産残高を一時金で受給することができます。

脱退一時金
一定の要件を満たして脱退した場合に一時金で受給することができます。

企業型年金を資格喪失した後に企業型記録関連運営管理機関に請求するケース。
以下の全ての要件に該当する者

  1. 企業型年金加入者、企業型年金運用指図者、個人型年金加入者及び個人型年金運用指図者でないこと
  2. 資産額が15,000円以下であること。
  3. 最後に当該企業型年金加入者の資格を喪失してから6ヶ月を経過していないこと。

個人型記録関連運営管理機関又は国民年金基金連合会に請求するケース。
以下の全ての要件に該当する者

  1. 国民年金保険料免除者であること。
  2. 障害給付金の受給権者でないこと。
  3. 掛金の通算拠出期間が3年以下であること(退職金等から確定拠出年金へ資産の移換があった場合には、その期間も含む)又は資産額が25万円以下であること。
  4. 最後に企業型年金加入者又は個人型年金加入者の資格を喪失した日から起算して2年を経過していないこと。
  5. 上記1.による脱退一時金の支給を受けていないこと。

 

税制上のメリット


企業型DCでは、事業主拠出金は全額損金算入、加入者拠出金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になります。個人型年金(iDeCo)は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になります。
運用時には、特別法人税課税扱いとなりますが、平成31年度まで凍結されています。また、年金として受給する場合、公的年金等控除が適用されます、一時金で受給する場合、退職所得控除が適用されます。

個人型年金(iDeCo)と個人年金保険の節税比較

FPジャーナル2016年12月号より

【条件】

節税額①:所得税率10%・住民税率10%・40歳までの12年間(28〜40歳)
節税額②:所得税率20%・住民税率10%・60歳までの20年間(40〜60歳)
個人年金保険の住民税の計算に用いる控除額は、上限である28,000円で試算
32年間の合計は、節税額①②の合計額とし、復興特別所得税は考慮しない。

 

メリットとデメリット


メリット デメリット
加入者個人が運用の方法を決めることができる。 投資リスクを各加入者が負うことになる。
 社員の自立意識が高まる。 老後に受け取る年金額が事前に確定しない。
経済・投資等への関心が高まる。 運用するために一定の知識が必要。
運用が好調であれば年金額が増える。 運用が不調であれば年金額が減る。
年金資産が加入者ごとに管理されるので、各加入者が常に残高を把握できる。 原則60歳までに途中引き出しができない。
一定の要件を満たせば、離転職に際して年金資産の持ち運びが可能。 勤続期間が3年未満の場合には、資産の持ち運びができない可能性がある。
企業にとっては、掛金の追加負担が生じないので、将来の掛金負担の予測が容易。 加入者ごとに記録の管理が必要になるため、管理コストが高くなりやすい。
掛金を算定するための複雑な数理計算が不要。
拠出限度額の範囲で掛金が税控除される

厚生労働省HPより

 

まとめ


ファイナンシャルプランナー「竹内 太」の視点で、まとめてみます。
まず初めに留意すべき点は、拠出期間が長ければ長いほど良いと言うこと、運用指図は加入者個人が行うもので、運用商品を選定・提示する者(導入企業・金融機関)は、運用実績に関して責任を負わないということです。
しかし、下図の通り確定拠出年金(DC)の運用は自己責任を原則としながらも、実際には自分の資産状況について把握していない加入者や運用商品を選択することに困難を感じている加入者が少なくありません。運用する金融機関もトラブルを避けるため、半分以上が元本確保型商品となっているのが実情です。
企業型DCを導入する企業の多くは、運用商品の選定・提示を金融機関に委託しているケースが多いので、実質、運用商品を選定・提示するのは金融機関と考えて構いません。

DC資産構成割合(2015年3月末時点)

FPジャーナル2016年12月号より

拠出(運用)期間が長ければ、良い時と悪い時の運用実績が平均化されて、ブレ幅(リスク)が小さくなって行きます。つまりリスクを小さくすることが出来るのです。また、下図のとおりリスク商品の組入れ比率によってもブレ幅(リスク)は変わってきます。

配分割合による年間ブレ幅(リスク)の違いの例

FPジャーナル2016年12月号より

拠出期間中の掛金は全額所得控除されるため期間が長いほど節税金額が累積で大きくなり、節税効果を最大限に引き出すことが出来ます。
運用商品を選定・提示する金融機関は、商品の特徴などの説明はしますが、何を選ぶかは加入者本人の責任です。また、ひたすら掛け続ければ良いというものではありません。社会情勢等に応じて見直す必要が生じます。これについてもおそらく説明するでしょう。しかし、一定の知識がないとピンと来ないと言うことになりかねません。イメージだけは分かるが、実際には分かっていない人が多いのです。
節税効果についても実績を常に把握しておく必要があります。特に日本の会社員は税金が天引きされ、年末調整で納税が完結してしまうので、税に対する意識があまり高くありません。むしろ低いと断言できます。しかし、欧米では税込みで賃金が支払われ、確定申告で納税を完結します。税金を安くするための工夫を自然にやっています。
最後に国が進める施策に「貯蓄から投資へ」「同一労働同一賃金」「人材流動化」があります。投資へのハードルを下げるためには、国民に投資教育を施す必要があり、同一労働同一賃金や人材流動化を実現するには、労働対価としての賃金を自己管理させる必要があります。一生涯保証を自己責任で構築する必要があるのです。
国民がどのような労働環境におかれても、将来安心して生活できるように作られた仕組みの一つが確定拠出年金(DC)です。国は、人材が必要なところに流れやすく、働ける内は働き続けることのできる社会構造への転換を目指しているのです。小学生レベルでの金融教育が実施され始めたのもその一環ではないでしょうか。
これからの社会は、一定の金融知識を持たないと貧富の差が広がっていくと考えられます。目先の損得ではありません。一生涯のスパンで生活に困らない資産を確保しないといけないのです。本投稿が皆様の金融知識の一助となれば幸いです。

「イーエヌプランニング」では、金融知識があまりない方や本格的に将来設計をしてみたい方、投資を始めたいがどうしたら良いかなどの相談を受け付けております。総合ライフプランニングだけでなく、キャッシュフロー表や住宅ローンのシミュレーションなども賜ります。是非ご利用ください。

お問い合わせ
093-863-0711 イーエヌプランニング・担当:竹内


2 thoughts on “確定拠出年金制度

    1. 色々な意味で難しいですね。まず儲かっていないと導入する意味がない。(^^;
      ただ,会社案内に掲載すれば良い人材を確保出来るかもしれません。

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