明治日本の産業革命遺産【エリア6 長崎】



今回は、第六弾として「長崎」がテーマです。例によって、年表を見ながら読んでいくと分かりやすいと思うので、年表をリンクしておきます。
黒船来航で蒸気船の威力を目の当たりにした日本では、大船建造の禁が解かれ、蒸気船を含む西洋式艦船の整備に着手します。日本人が最初に入手した蒸気船は、オランダから寄贈された外輪式蒸気船「観光丸」です。その後、スクリュー式蒸気船としては、「咸臨丸」)が寄贈されています。何れもコルベットという種類の軍艦です。
日本で最初に建造された蒸気船は、薩摩藩が竣工させた「雲行丸」ですが、外輪式蒸気船で、実験船の位置付けです。連絡用などで実用もされましたが、設計性能を十分に満たしていなかったようです。実用的な国産蒸気船としては、前回取り上げました、佐賀藩の三重津海軍所で建造した「凌風丸」が最初と言われています。このようにして日本は、造船技術を身に付けていくことになります。また、蒸気船の建造に伴い、燃料となる石炭の需要が高まり、炭鉱業が発展していきます。

エリア6 長崎
小菅修船場跡
1869年に落成した日本で初めて蒸気機関を用いた洋式ドックで、日本の近代造船では最古の遺構が残っており、国の史跡に指定されています。通称「コンニャクレンガ」と呼ばれる扁平な煉瓦を用いた曳揚げ小屋は、日本最古の煉瓦造り建築です。五代友厚、小松清廉、トーマス・グラバーらにより設立され、同年に明治政府が買収の後、1887年に三菱に移管されています。現在は、三菱重工業長崎造船所が管理しています。

三菱長崎造船所 第三船渠
1905年に竣工した全長222.2m・建造能力3万トン(いずれも竣工当時)の大型ドックで、竣工当時は東洋最大規模だったそうです。その後、全長276.6m・9万5千トンに増強され、現在も三菱重工業長崎造船所のドックとして稼働中です。長崎造船所では明治時代に3つのドックが開設されましたが、そのうち唯一現存しています。竣工時設置のシーメンス社製排水ポンプも稼働中です。稼働中なので見学は出来ません。

長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン
1909年に竣工したイギリスのアップルビー社製・吊上げ能力150トンの電動カンチレバークレーンで、日本で初めて設置された大型カンチレバークレーンです。1961年に工場拡張のため移設されましたが、当初から変わらず大型機械の搭載や陸揚げに使用され、現在も稼働中です。稼働中なので見学は出来ません。

 

長崎造船所 旧木型場
1898年に竣工した煉瓦造り2階建の木型場で、明治30年代に作られた現存する木型場としては日本国内最大のもので、長崎造船所の現存する建物の中では最古です。骨組は木造クイーンポストトラス組みで、屋根は桟瓦葺きの切妻屋根となっています。1915年に増築されており、増築部分は鉄骨造フィンクトラス組みです。現在は長崎造船所の資料館となっており、見学可能です。

長崎造船所 占勝閣
1904年に落成した曽禰達蔵設計の木造洋館です。当時の長崎造船所所長、荘田平五郎の邸宅として建設されたもので、造船所構内の丘の上に立地しています。なお、予定されていた邸宅としては使用されず迎賓館となり、現在まで使用され続けています。

高島炭坑
開国後の蒸気船用石炭需要の高まりを受けて、1868年に日本で初めて蒸気機関を用いて竪坑が開削され、日本における近代炭鉱開発の先駆けとなりました。この坑は翌1869年に海底炭田に着炭し、北渓井坑と命名され1876年まで採掘されました。蒸気機関の動力は炭箱を運ぶ巻揚機、排水ポンプなどに使用され、その技術は筑豊炭鉱や三池炭鉱に伝わりました。北渓井坑跡は、国の史跡に指定されています。当初は佐賀藩とグラバー商会による共同経営でしたが、後に三菱の経営となり、1986年に閉山しました。

端島炭坑(軍艦島)
1870年に石炭の採掘が始まり、1890年に三菱の所有となった炭鉱の島です。製鉄用原料炭に適した良質な石炭を産出する炭鉱で、炭鉱開発とともに埋め立てにより拡張され、大正期の1916年以降に多くの鉄筋コンクリート造高層住宅が建設され、国の史跡に指定されています。明治末期には八幡製鉄所向けの原料炭生産地となりました。1974年に閉山しましたが、地下を含めて多くの生産施設や幾度に亘る埋め立ての護岸遺構が残っています。老朽化のため立入禁止となっていましたが、2009年から見学施設内に限り見学可能となっています。なお、Google ストリートビューでは、立ち入りが規制されている区域の一部の様子を見ることが出来ます。

旧グラバー住宅
小菅修船場や高島炭鉱の経営など、近代技術の導入を通じて日本の近代化に尽力した、スコットランド出身の実業家トーマス・グラバーの邸宅です。主家は1863年に建設された日本最古の木造洋風建築で、欄間がアーチ型になっている一方で、日本瓦や土壁が用いられるなど、イギリスのコロニアル様式と日本の伝統技術が融合した形となっています。主屋と附属屋の2棟が国の重要文化財に指定されています。他の邸宅や移築されてきた洋館などと併せて、1974年に観光施設「グラバー園」となりました。

 

アクセス

小菅修船場跡
(長崎駅より長崎バス15分、小菅町バス停下車、徒歩5分)
※駐車場はありませんので公共交通機関をご利用ください。

三菱長崎造船所 第三船渠
(非公開)

長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン
(非公開)

長崎造船所 旧木型場
(長崎駅よりシャトルバス15分、要予約)
(大人(高校生以上):800円、小・中学生:400円、要予約)

長崎造船所 占勝閣
(非公開)

高島炭坑
(長崎港より高島航路35分、高島港ターミナルより、徒歩25分)
※コミュニティバスもあるようです。

端島炭坑(軍艦島)
(長崎港より軍艦島上陸クルーズ、各種あり)

旧グラバー住宅
(長崎駅より路面電車15分、大浦天主堂下下車、徒歩5分)

 

如何でしたでしょうか。長崎には見どころが沢山あります。観光情報を掲載するとブログが一本出来てしまいますので、他サイトで調べてみてください。特に軍艦島クルーズは、それだけで一日費やす覚悟が必要です。

 

バックナンバー

序 章:明治日本の産業革命遺産【序章】

第1回:    〃      【エリア1 萩】

第2回:    〃    【エリア2 鹿児島】

第3回:    〃     【エリア3韮山】

第4回:    〃     【エリア4 釜石】

第5回:    〃     【エリア5 佐賀】

第6回:    〃     【エリア6 長崎】



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