明治日本の産業革命遺産【序章】



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私は、旅行で名所旧跡を見て回るのが好きです。旅行に行く目的は人それぞれありますが、たとえ食を目的に旅行する方でも、その土地の名所旧跡を一つや二つは見ると思います。私の場合、ただ見るだけでは満足できず、どうしても背景などを考えてしまいます。そこに旅のロマンを感じるのです。このような理由から、今回のテーマは非常に興味深いと思います。雑学として少しでも知っておくと行った時により一層感動が増すのではないでしょうか。

2015年の第39回世界遺産委員会でUNESCOの世界遺産リストに「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が登録されたのはご存知のとおりです。
登録された遺産群は、日本全国に点在しており、一度に紹介するのは困難です。そこで、エリア毎に、8回に分けてご紹介したいと思います。
今回は、何故、遺産的価値が認められたのかを紐解いて、次回から掲載する各エリア毎の説明を出来るだけ簡素化したいと思います。
登録された遺産群は、山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島・岩手・静岡の8県に点在しています。1850年代から1910年(幕末 – 明治時代)までに西洋からの技術移転と日本の伝統文化を融合させ、急速な発展をとげた炭鉱、鉄鋼業、造船業に関する文化遺産であり、日本では初めて稼働遺産が登録されました。
まず、以下の年表をご覧ください。
大きな流れとしては、幕末期には長州藩(山口県)と薩摩藩(鹿児島県)が大きく貢献し、明治期においては、長崎県と福岡県が近代化に大きく貢献しています。また、幕末期の吉田松陰の存在は、大きかったと考えられます。明治期に入って急速に近代化が進んだところも興味深いところです。

年譜 和暦 登録遺産 地域 概要(時代背景)
1842年 天保
13年
萩城下町 山口県
萩市
近世社会を切り拓いた城下町の都市遺産
(天保の改革により株仲間解散令発布)
1852年 嘉永
5年
関吉の疎水溝 鹿児島県
鹿児島市
集成館事業の水車動力用水路
(ロシア船メンチコフ号が下田に来航)
1856年 安政
3年
大板山
たたら製鉄遺跡
山口県
萩市
西洋式軍艦の製造に欠かせない鉄の供給
(講武所で西洋式調練・砲術などを教授)
萩反射炉 山口県
萩市
西洋式の鉄製大砲製造
(ハリス、米総領事として下田に到着)
恵美須ヶ鼻
造船所跡
山口県
萩市
大型の西洋式軍艦を製造した造船所
(丙辰丸を建造)
1857年 安政
4年
松下村塾 山口県
萩市
幕末当時の塾舎
(吉田松陰、松下村塾を叔父の玉木文之進から承継)
韮山反射炉 静岡県
伊豆の国市
実際に大砲を鋳造した実用炉
(下田協約が締結)
1858年 安政
5年
寺山炭窯跡 鹿児島県
鹿児島市
木炭製造用の石積み窯
(安政の大獄の始まり)
橋野鉄鉱山 岩手県
釜石市
現存する最古の西洋式高炉への鉄鉱石採掘供給
(日米修好通商条約調印・日蘭修好通商条約調印)
三重津海軍所跡 佐賀県
佐賀市
海軍訓練場として使用後、造船や修理場として使用
(日露修好通商条約調印・日英修好通商条約調印)
1863年 文久
3年
旧グラバー住宅 長崎県
長崎市
実業家トーマス・グラバーの邸宅
(薩英戦争が勃発・高杉晋作らが奇兵隊を編成)
1865年 慶応
元年
旧集成館
(尚古集成館)
鹿児島県
鹿児島市
工場群を設けて軍事強化と産業育成
(グラバーが長崎で日本発の蒸気機関車を走らせる)
旧集成館反射炉跡 鹿児島県
鹿児島市
在来工法による石積みや薩摩焼の技術
(高杉晋作、下関で挙兵)
旧集成館機械工場 鹿児島県
鹿児島市
金属加工や船舶の修理、部品加工が行われた機械工場
(英仏蘭三ヶ国艦隊、兵庫沖に来航)
1867年 慶応
3年
旧鹿児島紡績所
技師館(異人館)
鹿児島県
鹿児島市
イギリス人技術者の宿舎
(大政奉還・近江屋事件「坂本龍馬暗殺」)
1868年 明治
元年
高島炭坑 長崎県
長崎市
日本で初めて蒸気機関を用いて竪坑が開削
(戊辰戦争、鳥羽・伏見の戦い)
1869年 明治
2年
小菅修船場跡 長崎県
長崎市
日本で初めて蒸気機関を用いた西洋式ドック
(東京遷都「明治天皇が東京に到着」)
1870年 明治
3年
端島炭坑
(軍艦島)
長崎県
長崎市
製鉄用原料炭に適した良質な石炭を産出
(横浜-新橋間の鉄道が着工)
1873年 明治
6年
三池炭鉱
三池港
福岡県
大牟田市
熊本県
荒尾市
石炭の積出港として整備
(仇討禁止令布告)
(東京・長崎間電信線架設)
(万国博覧会に初めて日本参加)
1887年 明治
20年
三角西(旧)港 熊本県
宇城市
明治政府の産業開発と港湾整備の一環として建設
(ロエスエルが「日本帝国憲法草案」を起草)
1898年 明治
31年
長崎造船所
旧木型場(史料館)
長崎県
長崎市
国内最大の現存する木型場
(大師電気鉄道「現・京浜急行」創立)
三池炭鉱
宮原坑
福岡県
大牟田市
熊本県
荒尾市
三池炭鉱主力坑
(門司・長崎間鉄道全機開通する)
(本土・九州間の汽車・汽船連絡を開業)
(上野公園で西郷隆盛銅像の除幕式)
1899年 明治
32年
八幡製鐵所
旧本事務所
福岡県
北九州市
赤煉瓦組積造の建物
(東京-大阪間に電話が開通)
1900年 明治
33年
八幡製鐵所
修繕工場
福岡県
北九州市
国内最古の鉄骨建築物
(未成年者喫煙禁止法公布)
八幡製鐵所
旧鍛冶工場
福岡県
北九州市
製鐵所建設に必要な鉄の部品や工具の製造
(津田梅子が女子英学塾「後の津田塾大」を開校)
1901年 明治
34年
官営八幡製鐵所 福岡県
北九州市
東田第一高炉に火入れが行われ稼働開始
(足尾銅山鉱毒事件で田中正造が明治天皇に直訴)
1902年 明治
35年
三池炭鉱
万田坑
福岡県
大牟田市
熊本県
荒尾市
採炭技術の近代化
(日英同盟調印)
(小石川砲兵工廠スト )
(国勢調査法公布される)
1904年 明治
37年
長崎造船所
占勝閣
長崎県
長崎市
長崎造船所所長、荘田平五郎の邸宅
(日露戦争が勃発)
1905年 明治
38年
三菱長崎造船所
第三船渠
長崎県
長崎市
竣工当時東洋最大規模の西洋式ドック
(夏目漱石が「吾輩は猫である」を連載開始)
三池炭鉱
専用鉄道敷跡
福岡県
大牟田市
熊本県
荒尾市
石炭や資材の運搬のために敷設された専用鉄道
(ポーツマス条約締結で日露戦争終結)
(韓国統監府を設置)
(大阪ガス会社開業)
1908年 明治
41年
三池港 福岡県
大牟田市
熊本県
荒尾市
石炭を大型船に乗せて運搬するために建設
(第一回ブラジル移民の笠戸丸が神戸から出港)
(国際無線電信条約公布)
(石油消費税法公布)
1909年 明治
42年
長崎造船所
ジャイアント・カンチレバークレーン
長崎県
長崎市
日本で初めて設置された大型カンチレバークレーン
(伊藤博文が安重根に暗殺される)
1910年 明治
43年
遠賀川水源地ポンプ室 福岡県
中間市
遠賀川上流から取水し八幡製鐵所に送水する施設
(韓国併合、朝鮮総督府設置)

 

 

私は、この年表から幕末には既に欧米から技術を学び、明治期にはその応用で急速に近代化が進んだことに気付きました。そして幕末期に欧米諸国に開国を迫られ、日本を守るために軍事力を強くすることが急務であったこともうかがえます。また、欧米諸国の技術を上手に吸収して明治期に開花させた日本人の底力に感動を覚えます。

産業革命遺産マップ

 

次回から反射炉という言葉が良く出てきますので、簡単に説明しておきます。
反射炉(はんしゃろ)とは、金属融解炉の一種です。18世紀から19世紀にかけて鉄の精錬に使われていました。20世紀以降も、鉄以外の金属の精錬には使われています。
熱を発生させる燃焼室と精錬を行う炉床が別室になっているのが特徴です。燃焼室で発生した熱を天井や壁で反射し、側方の炉床に熱を集中させて、炉床で金属(鉄)の精錬を行います。簡単に言うと燃焼室で金属(鉄)を溶かして炉床で不純物を取り除いて取り出すと思えば良いでしょう。鉄鋼の精錬では転炉など他の方式に取って代わられ、使われることはなくなりましたが、現在でも銅製錬、再生アルミニウムの融解炉として使われています。

今後、下記のスケジュールで、エリア毎に連載します。旅の参考になる情報も掲載しますので是非ご期待ください。

連載スケジュール

6月3日 (金曜日) エリア1 萩
6月10日(金曜日) エリア2 鹿児島
6月17日(金曜日) エリア3 韮山
6月24日(金曜日) エリア4 釜石
7月1日 (金曜日) エリア5 佐賀
7月8日 (金曜日) エリア6 長崎
7月15日(金曜日) エリア7 三池
7月22日(金曜日) エリア8 八幡



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